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東京借地借家人新聞


2007年10月15日
第487号

深刻化する居住貧困

家賃の支払困難な若者や中高年が
機能していない住宅のセーフティネット
足りない公営住宅の拡充強化を


応募者が急増しても
新規建設しない都営住宅

 昨年の6月に「住生活基本法」が制定され、政府の住宅政策は住宅の建設を中心とする政策から「ストック重視」、「住まいの安全・安心の確保」などの「住宅の質」を強化する政策に大きく方向転換した。

構造改革で居住貧困が拡大

 ところが、小泉内閣以後の「構造改革」政策の推進によって、貧困と格差が拡大し、公営住宅への入居申し込みが殺到する一方で、公営住宅の供給が増えないため、応募倍率も全国で平成09年度2・6倍から16年度9・7倍に急増、東京では実に10・5倍から28・5倍と宝くじ並みの倍増に跳ね上がった。公営住宅は「いざというときのセーフティネットとしては機能していないのが実情」(産経新聞2月5日)とさえいわれている。
 さらに、日雇いなどの仕事に従事し、家賃や礼金・敷金が払えないでネットカフェや漫画喫茶などで寝泊りするホームレス状態の「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者や中高年の居住貧困も深刻化する一方である。借地借家人組合に相談する若者たちの中には老朽化するアパートを追い出されると「貯金がないため、住むところがない」、「家賃3万円台のアパートに入れないと家賃を支払い続けられない」といった深刻な相談も寄せられている。

建てずに追い出す公営住宅

 今年作成の「住生活(都道府県)計画」では、新築は全国で10年間でたったの1万2千戸、ほとんどが空家募集(90万4千戸)に頼る有様だ。そこで、公営住宅の入居収入基準の大幅な見直し(月収20万円から15万8千円)を政令改正により2年後に実施し、11万8千人が収入超過者で追い出される。また、東京都のマスタープランでは、「期限付き入居制度」による募集戸数の拡大、入居資格者を原則配偶者に限定するなど、公営住宅入居者の追い出しを促進させようとしている。全国計画では「憲法25条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図ることが求められる」というが、ネットを壊す一方でセーフティネットとは矛盾した話だ。




住宅セーフティネットで
国交省交渉とシンポ開催

住まい連

連帯保証人代行会社のHP

 住まいを守る全国連絡会(住まい連)は、9月28日午後6時から新宿アイランド・都市労事務所において幹事会を開催し、東借連から佐藤会長、細谷専務理事が出席した。
 幹事会では、「住宅セーフティネットに関する基本的方針案」の検討会の報告等があり、当面する住まい連の活動と取り組みについて討議した。当面の取組みとしては、住宅セーフティネットに関する基本的方針の検討、分析に基づき10月に国交省に対して質問・要請書を提出し、10月から11月にかけて国交省交渉を行なう。住宅セーフティネットに関するシンポ・討論集会を11月14日に開催し、各住宅団体の運動と実態報告を行なう。全生連や首都圏青年ユニオンにも呼びかけ、高齢者や青年の居住貧困問題を告発する集会にする。
 住宅セーフティネットの基本方針案について、東借連では、現行の家賃債務保証制度の問題点を指摘し、家賃を滞納した借家人の対策は皆無であること、低所得者への家賃補助、ネットカフェ難民等への賃貸住宅入居のための初期費用(礼金・敷金・仲介手数料等)の貸出しする制度の創設、借地借家法改悪反対等について意見を提出した。




更新料で頑張ってる
荒川区町屋の梅津さん

20年前の倍額650万円の請求
拒否すると借地の無断譲渡と因縁

 荒川区町屋で共有名義50坪を借地している梅津さん夫婦は、昨年秋に更新料として20年前の倍額の650万円の支払いを要求されたが、きっぱりと支払い拒否し法定更新をした。その後、地主から何度も「非人間だとか、人の土地を奪い取るのか」等々の手紙を何通も受け取った。梅津さんはその都度、借地人の権利義務の関係を地主に訴え、対応の正当性を主張し続けた。
 今年5月になって、地主の代理人の弁護士2名より突然、梅津さんのご主人名義で家を建てたのは借地の無断譲渡との理由で契約を解除する旨の内容証明が送られてきた。梅津さん夫婦は、現在の住居を数十年前に建てた時先代の地主との間で話し合い合意が成立の上、承諾書も交わしてあったので無断譲渡ではないと代理人に回答した。
 6月に入ると代理人の弁護士から再度通知があり、「梅津さんを正式に借地人として認める。但し特約事項で、(1)更新時に更新料を支払うこと、(2)現賃貸人の亡夫が地主当時合意した事実も一切承認しないのでご主人亡き後地主の承諾なしでは借地権の相続は認めない」との契約書の作成をしたい旨の申し出があった。梅津さん夫婦はこんな契約は断固拒否すると返答した。
 その後、地主は更新料を不払いだからと6月から更に5000円の値上げを請求し、契約書の作成と更新料と地代値上げは絶対に譲歩しないと主張している。梅津さんは不当な請求を拒否して頑張る決意だ。


 

地主が底地を業者に売却

豊島区


底地が転売された豊島区上池袋附近

 豊島区上池袋で借地している斉藤さんたちは、今年の春にいきなり地主から「底地を売買し、今後はA不動産が地主になった」と通知された。業者は一方的に「更地価格は○○万円でその借地権割合の3割でいくらになるから買い取ってほしい」と言ってきた。いきなりの底地の売買と言うことで、不安になった斉藤さんは地元の元区議で組合の役員のところに相談に行った。そこで、借地人全員が組合に入会し、買取った業者に対抗していくことにした。借地問題の勉強会を行い、今までの借地契約はそのままであること、売買に応じるかどうかは自由であって借地のままでもかまわないことを話した。また、国に地主などが物納した場合は路線価の借地権割合で売買に応じていることなどを話し、全員がそのような話合いなら応じることにした。この業者は組合とは別に個別に売買しようとしているので全員がまとまって対処していくことで確認した。




【借地借家相談室】

借地上建物の借家人が地主から借地
契約解除を理由に明渡を要求された

(問)借地上の建物を賃借しているが、突然地主から家主(借地人)が地代を長期間滞納したので債務不履行を理由に借地契約を解除したと通告された。6ヵ月後に建物を取壊すので早急に建物を明渡すよう要求された。地主の要求に応じなければならないのか。

(答)借地人の地代不払い・無断増改築等の債務不履行によって借地契約が消滅した場合に、判例は借地契約の消滅を借家人に対抗出来るとしている。その場合、借家人に対する代払いの催告も不要であり、借家契約は借家人が現実に建物利用出来なくなった時に履行不能となり消滅すると判旨している((1)最高裁昭和45年12月24日判決)。
 従って債務不履行を理由とした契約解除の場合、借家人は地主に賃借権を主張できないので最終的にはは建物を明渡さなければならない。
 では、家主である借地人の滞納地代を借家人が居住権を守るために代払いすることは出来ないのか。
 判例は借地権の消滅を防止することに法律上の利益を有することから借家人が借地人に代わって地代を支払うことを認めている((2)最高裁昭和63年7月1日判決)。しかし借家人にまで代払いの催告をして、滞納地代の支払の機会を与える必要はない((3)最高裁昭和51年12月14日判決及び上記(1)の最高裁判決)としている。相談者の地主は建物を取壊す目論見があるので代払いを認めることは状況から困難である。
 借地契約が解除される場合でも、(1)の判決にあるように、借家契約は直ちに終了する訳ではない。地主と借家人との間で建物・敷地の明渡義務が確定され、地主が建物収去土地明渡の強制執行をして建物の使用収益が現実に出来なくなる等、借家人が現実に建物を使用出来なくなるまで借家契約は終了しない。それまでは建物の明渡請求に応じる必要はない。
 但し、借家人は建物取壊しまでの間の家賃を支払う義務がある。加えて地主から地代相当額の損害金の請求を受ける場合もあるので留意すべきである。
 なお借地人が建物を第三者に賃貸しても借地自体を転貸したことにはならない。従って地主に無断で建物を賃貸しても地主は契約を解除することは出来ない。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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