深刻化する居住貧困
家賃の支払困難な若者や中高年が
機能していない住宅のセーフティネット
足りない公営住宅の拡充強化を
昨年の6月に「住生活基本法」が制定され、政府の住宅政策は住宅の建設を中心とする政策から「ストック重視」、「住まいの安全・安心の確保」などの「住宅の質」を強化する政策に大きく方向転換した。
構造改革で居住貧困が拡大
ところが、小泉内閣以後の「構造改革」政策の推進によって、貧困と格差が拡大し、公営住宅への入居申し込みが殺到する一方で、公営住宅の供給が増えないため、応募倍率も全国で平成09年度2・6倍から16年度9・7倍に急増、東京では実に10・5倍から28・5倍と宝くじ並みの倍増に跳ね上がった。公営住宅は「いざというときのセーフティネットとしては機能していないのが実情」(産経新聞2月5日)とさえいわれている。
さらに、日雇いなどの仕事に従事し、家賃や礼金・敷金が払えないでネットカフェや漫画喫茶などで寝泊りするホームレス状態の「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者や中高年の居住貧困も深刻化する一方である。借地借家人組合に相談する若者たちの中には老朽化するアパートを追い出されると「貯金がないため、住むところがない」、「家賃3万円台のアパートに入れないと家賃を支払い続けられない」といった深刻な相談も寄せられている。
建てずに追い出す公営住宅
今年作成の「住生活(都道府県)計画」では、新築は全国で10年間でたったの1万2千戸、ほとんどが空家募集(90万4千戸)に頼る有様だ。そこで、公営住宅の入居収入基準の大幅な見直し(月収20万円から15万8千円)を政令改正により2年後に実施し、11万8千人が収入超過者で追い出される。また、東京都のマスタープランでは、「期限付き入居制度」による募集戸数の拡大、入居資格者を原則配偶者に限定するなど、公営住宅入居者の追い出しを促進させようとしている。全国計画では「憲法25条の趣旨が具体化されるよう、公平かつ的確な住宅セーフティネットの確保を図ることが求められる」というが、ネットを壊す一方でセーフティネットとは矛盾した話だ。 |