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2007年1月15日
第478号 |
明渡で頑張った
老朽化を理由に立退請求
家主が申立てた調停で納得できる和解
新井さんは、かつて練馬区で老朽化を理由に明渡しを求められ、やっとのことで、豊島区長崎に居住した。静かな住宅街で、これで安心して住み続けることができると考えていた。二回目の契約を合意更新したあたりから隣室の人とのトラブルに巻き込まれるようになった。何度も家主並びに管理している不動産会社にトラブルを取り除くように要請したが、らちがあかなかった。
そのうちに、家主が老朽化を理由に明渡しを求めてきた。管理する不動産会社は、必要に迫ってきた。そこで借地借家人組合に入会した。組合と相談し、建物の老朽化は認めるが朽廃ではないので正当事由はみとめられないが条件が合えば明渡しに応じると通知した。条件面では話合いがつかず、家主は調停を申し立てた。明渡し期限と立退きの和解金で当初家主が主張していた金額の二倍、明渡しの期限も大幅に伸ばすことができた。新井さん「途中、何回も心配で眠れなくなりそうでした。でも、組合と相談した結果、何とかめどがたちました。ほんとうにありがたいです」と語った。
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大田区大森東2丁目、旧東海道(現在は美原通り)から左折してスルガヤ通り、この通りに面した鉄筋3階建店舗兼共同住宅の内、3階中央部6畳一部屋を賃借していた森さんが昨年12月、今年の6月末までに明渡すように求められて組合に相談。早速、組合員であり組合を通しての交渉を書面で申し入れた。しかし、家主が組合事務所を訪れたのが6月になってからでした。
当初家賃の10ヵ月から13ヶ月分の立退料で他の借家人は応じたと強気でした。組合役員は家賃の安いに関わりなく一定の保障は必要と、家賃の28・5ヵ月分を請求し二度目の交渉で合意。さらに、家主が立退き猶予期間6ヵ月の家賃相当額の、使用損害金の免除を申し出るなどにより円満な解決になった。
年末を目の前にして、やっと移転先を見つけることが出来、新年を新しい住居で迎えることが出来たと森さんは喜んでおります。
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定借を強要
新家主が定期借家契約と家賃
倍額値上を通知、供託で対抗
武蔵野市
武蔵野市境で戦前から木造平屋建て一戸建の借家に住む伊藤さんは、家主が昨年9月末で地主に借地権付の建物を売却してしまった。
新家主(地主)から、いきなり昨年10月から1年契約の定期借家契約を結ぶよう請求され、家賃も月額4万2500円を10月分から月額7万円に値上げして前払いで支払えとの一方的な内容の通知を内容証明郵便で送りつけられた。伊藤さんは不安になって組合に相談に来た。
組合役員から「定期借家契約は期間が満了したら借家を無条件で明渡さなければならない。現行法では普通借家契約から定期借家契約に変更することは住居では認められていない」とのアドバイスを受け、新家主から来た内容証明郵便に対し、組合を通じて「定期建物賃貸借契約にて賃貸借契約を締結せよとのお話ですが、特別措置法附則第3条により、普通借家契約から定期借家契約への切替は法律で認められていません」ときっぱり拒否し、家賃の値上げについても更新が出来る2年契約でなければ協議に応じられない旨を返答した。
10月分の家賃を10月末に提供したが、受取を拒否されたので、伊藤さんは早速東京法務局府中支局に供託手続きをとった。すると、家主は家賃値上のみで調停申し立てをして来た。どうやら、定借契約への切替えは諦めたようだ。
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二度目の更新は供託
地主は慌てて値上撤回
足立区
足立区伊興本町に住んでいる榎本忠さんは、土地を借りて40年。今年が2度目の更新。 払うつもりでいたが、地主は更新料は高額だし、更に地代も上げろと言うので、ともかく頭にきてしまった。
それでも、約一ヵ月ほど交渉をしたがぜんぜんダメで、地代も受取らず、「供託でも何でもせえ」と話にならない。 榎本さんは仕方なく組合で書き方を教り、供託をした。
すると、半月もたたないうちに地主が来て、「また今月も供託するのか」と今度は猫なで声になった。
榎本さんも、ここでなめられてはたまらないと「受取ってくれなければ、何年でも供託するよ」と跳ね返したら「地代は上げないでいいから、供託はしないで下さい」とすっかりしおらしくなった。
でも、更新料は諦めていない様子なので、まだま油断は出来ない。
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【借地借家相談室】
更新料支払特約は法定更新の場合には
適用が無く更新料支払義務は無い
(問)京都地裁で更新料支払特約があっても契約を法廷更新した場合には、借主に更新料支払義務は無いという借家での判決があった。他に約定更新料の支払義務無しという借家に関する高裁又は最高裁の判例はあるのか。
(答)東京では更新料特約がある場合、契約を法定更新した時に更新料の支払義務の有無が裁判で幾度となく争われている。
具体的な判例で検討してみる。借主Aは、賃貸マンションを期間2年、更新の際は新家賃の2ヵ月分の更新料を支払うという更新特約が有る契約を結んだ。2年後の更新時に家賃の増額で紛糾し、合意更新ができなかった。Aは更新料を拒否し、相当と思われる家賃を供託し、法定更新の途を選択した。貸主は増額家賃・更新料の不払を理由に契約解除を通告し、未払家賃・更新料の支払と建物明渡を求めて提訴した。
地裁は、約定更新料は法定更新には適用されず、支払義務は無いとしてAの主張を全面的に認め、貸主の請求を棄却した。控訴を受けて東京高裁は「法定更新の場合、賃借人は何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には適用の余地がない」(東京高裁1981年7月15日判決)とした。この判決を不服として貸主が上告したが、最高裁は上告を棄却した。最高裁は「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(1982年4月15日判決)と明快な判断を下している。
このように更新料支払特約は合意更新を想定したもので、法定更新には適用されない。これは当然の結論である。借地借家法は経済的負担の無い法定更新を定めている。更新料特約は法の趣旨に反して借主に不利益な経済的負担を課している。特約が法定更新の場合にも適用されるとすれば、それは実質的に経済負担を強制する合意更新を義務付け、無償の法定更新を排除するに等しい。換言すれば法定更新制度の否定である。
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