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2005年5月15日
第458号 |
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借地人が建物買取請求権を行使すると明渡の強制執行の阻止理由になる
建物収去土地明渡判決と建物買取請求権(最高裁平成七年一二月一五日判決、判例タイムズ八九七号)
(事案)
借地人は、期間満了に際して更新を拒絶され、正当事由有りということで、借地上の建物を収去して借地を明け渡せという判決を受けた。借地人は、建物収去土地明渡の強制執行を実行されてしまう立場になったが、借地法に基づき建物買取請求権を行使して、それを理由にして、強制執行を許さないと争った。一審、二審とも借地人の請求を認め、最高裁も同様の判決をした。
(判決要旨) 「借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時まで(高裁が結審するまでという意味)に借地法四条二項の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の右請求を認容する判決がなされ、同判決が確定(した場合であっても、賃貸人は、その後に建物買取請求権を行使した上、賃貸人に対して右確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができる。なぜなら、建物買取請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃貸人の建物収去義務が消滅するに至るのである。したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当るものではなく訴訟法上も、同訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはない。そうすると、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時以降に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法三五条二項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当する。」
(説明)
借地期間到来に際して、更新を拒絶されたときは、借地人は借地上の建物を地主に買い取ってもらう権利建物買取請求権がある。この建物買取請求権は、地主から起こされた土地明渡請求訴訟の最中に行使する義務はなく、いつ行使してもよい。建物買取請求権を行使すると、建物の所有権は地主に移転し、借地人は、建物代金の請求権を取得する。その結果、借地人は、建物を収去する義務がなくなり、また、建物代金が支払われるまでは、建物からの退去を拒否することができる。
この判決は建物買取請求権行使の効果が請求異議事由(明渡の強制執行を阻止する理由)になることを初めて認めた最高裁判決である。
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更新料で頑張る
大田区新蒲田の中本さん達
地主が書面で持参を強要
支払いを断り、拒否された地代の供託を通知
大田区新蒲田3丁目所在の宅地39坪を賃借中の中本さんの契約期間満了は平成14年の6月。また、同一地主から賃借人の荒井さんも宅地50坪の期限は同年10月であった。地主より不動産業者を差し向けるとの連絡があり、やっと今年になって業者と話し合いとなった。業者は地主より伝えられていた、坪5万円の更新料に固守し交渉は決裂した。しかし地主は請求額の更新料を3月末日までに、持参せよとの書面により催促してきた。組合と相談して中本・荒井の両氏は、法定更新となり、昨年12月分までの持参した地代が受領されていること。交渉の決裂、更新料の支払い義務は法律上の規定はなく、商習慣も最高裁が拒否しており、借地人らは支払いに応じないことと、拒否された地代を供託する旨を内容証明郵便にて通告した。
中本さんと荒井さんは、今後も自信を持って対応すると決意している。
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短期賃貸借の家
競売の買受人が突然現われ
建物の即時明渡請求を迫る
台東区
川越市の金沢さんは2001年12月から旧い一戸建ての建物を家賃5万3000円で借りている。期間満了は本年11月30日である。
4月中旬に突然、競売物件を専門に扱う不動産会社の社員が来訪し、建物を競売で買受けたので5月31日までに立退きを完了して貰いたい。この条件が呑めるのであれば5月分の家賃の支払は猶予する。それに加えて立退料20万円を支払う。それ以上、立退きが延びるのであれば立退料は一切支払わない。
金沢さんは現在、失業中で雇用保険だけで生活している。11月には雇用保険も打切られる。すぐ引越し出来ない理由を縷々説明した。居座りは認めないの一点張りで、10日間だけ回答を猶予すると言って社員は帰っていった。
翌日、市の消費者相談室へ相談すると担当者がインターネットで検索して東借連を紹介した。巡って台東借組への電話相談となった。 組合は、競売になったのであるから当然、建物に抵当権が設定されていた筈である。建物の抵当権設定登記の日付と、不動産会社に所有権移転登記が終了しているのか法務局へ行って登記簿の閲覧をするように説明した。金沢さんから再び電話があり、建物の移転登記は未だ完了していないが、建物に抵当権が1997年5月に設定されているという。抵当権設定後に賃貸借契約を結んでいる所謂短期賃貸借であり、新家主に対抗出来る。2004年4月1日に短期賃貸借保護制度は廃止された。だが経過措置で、短期賃貸借の保護制度は適用される。しかし居住権が保護されるのは契約期間満了日のまでの約7か月間であること、家賃は二重払いの危険があるので1か月程様子を見ること、敷金は新家主から返還されることを説明した。
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交渉で地代値下
豊島区
豊島区南大塚に住む田中さんは、戦前から借地して住んでいた。戦後、焼け跡の中から、家を建て住み続け、今日にいたった。地主の言う通りの地代を支払っていたが、地主も代替わりし、借地人も代替わりし、地代を調べてみると税金の五倍以上になっていた。田中さんは、組合のアドバイスも受けながら、地主に地代減額の請求をした。地主からは「減額請求する人間がいるなんて聞いたことがない」と回答された。
インターネットなどで不動産鑑定協会などのデータや税金が平成九年以降下落していることなどを調べ上げて交渉にのぞんだ。地主は田中さんの請求に押され、現行の約半分とし、税金の三倍程度にすることで合意した。田中さんは「かつては税金の三倍程度だったが、税金が下がっているのに地代は下がっていない。減額請求している人が少ないからです。ダメでもともと組合員は請求すべきです」と語った。
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高齢の借地人の借地権譲渡
北区志茂で宅地を借りている川名のり子さんは、寄る年波には勝てず、大病を患い、昨年とうとう寝たきりの状態になってしまった。
川名さんの妹さんが「姉が長いこと北借組にお世話になっていました」と組合を訪ねて来た。本人を一人置くわけにもいかず、引き取って面倒を見ているとのこと。 そこで、借地を地主に返したいのだが、更地にして返すとなると、二棟ある家屋を取り壊す費用が百万円を超えてしまう。どうしたものかと相談にきた。妹さんは、北借組の法律相談で借地権を譲渡する事にした。信用のおける不動産業者と組合の弁護士の力を借りて無事譲渡。妹さんは解体費用を払わずに済ますことができたと喜んでいる。
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【借地借家相談室】
大震災で借家が全焼・全壊した場合
借家人にはどんな救済措置があるか
(問)福岡西方沖地震、新潟県中越地震と大災害が続いている。もしこのような大災害に遭遇した場合、借家人にはどのような救済措置があるのか。
(答)2004年10月23日の震度6強の新潟県中越地震に対して本年4月15日政令で長岡市、小千谷市等の7市3町村に「罹災都市借地借家臨時処理法」(以下処理法)が適用された。一般的には借家している建物が火災、地震、台風等によって「全焼・全壊」(滅失)してしまうと借家権は消滅する。しかし大災害に対して「処理法」が政令で適用されると震災で建物が滅失しても借家権は消滅しない。
《再築後の建物の優先賃借権》罹災借家人は土地所有者或は借地人が罹災跡地又は換地に建物を再築した場合、その完成前に借家契約の申し出をすると他の者に優先して賃借することが出来る。建物所有者は自己使用その他正当事由があり、且つ申し出日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないと承諾したものとみなされる(14条)。
《土地賃借権の優先的取得》罹災建物に居住していた借家人は、建物を自力で復興させる場合、政令施行の日から2年以内でその建物の敷地・換地に借地権が無い場合に土地所有者に借地の申出をすれば他の者に優先して相当な借地条件で賃借することが出来る。土地所有者は、先記の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないと承諾したものとみなされる。土地所有者は自己使用などの正当事由が無いと申出を拒絶出来ない(2条)。
《借地権の優先的譲受け》罹災建物の敷地またはその換地に借地権が存在する場合は罹災借家人はその借地人に対し政令施行日から2年以内に借地権の譲渡の申出をすると他の者に優先して相当な対価でその借地権を譲り受けることが出来る。借地人は自ら使用する場合その他正当事由があり、且つ譲渡申出の通知を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしないとその申出を承譲したものとみなされる(3条)。この場合にはその譲渡について土地所有者の承譲があったものとみなされる(4条)。処理法適用下の借地期間は借地借家法の規定に拘らず10年に法定される。10年未満は期間を定めないものとみなす(5条)。当然更新(法定更新)が出来る。
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