東京借地借家人組合連合会（過去のページ）

法２０条1項後段の付随的裁判で敷金の交付を命ずることが出来るとした事例

　借地借家法二○条一項後段の付随的裁判として敷金を差し入れるべき旨を定めその交付を命ずることが出来るとした事例（最高裁第二小法定・平成一三年一一月二一日決定。判例タイムス一○七九号一七五頁）

（事案）
　借地上の建物を競売により取得した者が、借地借家法二○条に基づき、賃借権の譲渡について借地権設定者である抗告人の承諾に代わる許可申立事件。抗告人は昭和五七年一○月一四日、その所有土地を堅固な建物の所有を目的とし、期間を平成三八年一二月一四日までと定めて、Ａ会社に賃貸。Ａは敷金一千万円を右契約によって生ずるすべての債務を担保するために、契約が終了し土地明渡し時に返還を受ける約定で、抗告人へ差し入れていた。その後、Ａは借地上の建物について担保権の実行による競売をされ本件抗告の相手方が競落して建物の所有権を取得。右競売事件の物件明細書には、本件土地賃借権の期間は昭和五七年一○月一四日から四四年間、賃料月額一九万一一五○円、敷金一千万円と記載されていた。借地非訟手続において抗告人は、申立の棄却を求めると共に、許可を与える場合には付随裁判として地代の増額と財産上の給付およびＡが抗告人に交付したいたものと同額の敷金の交付を求めていた。また、Ａの敷金返還請求権に対し、国は差押をしていた。
　原々審および原審は、敷金については借地借家法二○条一項後段の付随的裁判としてその交付を命ずることができないとしていた。原決定を破棄、高裁に差し戻しを命じた。

（判旨）
　「土地の賃借人が賃貸人に敷金を交付していた場合に、賃借権が賃貸人の承諾を得て旧賃借人から新賃借人に移転しても、敷金に関する旧賃借人の権利義務関係は、特段の事情のない限り新賃借人に承継されるものではない（最高裁昭和５３・１２・２２判決）。したがって、この場合に賃借権の目的である土地の上の建物を競売によって取得した第三者が土地の賃借権を取得すると、特段の事情がない限り、賃貸人は敷金による担保を失うことになる、そこで、裁判所は上記第三者に対し法２０条に基づく賃借権の譲受けの承諾に代わる許可の裁判をする場合には、賃貸人が上記の担保を失うことになることをも考慮して、法２０条１項後段の付随的裁判の内容を検討する必要がある。その場合、付随的裁判が当事者の利益の衡平を図るものであることや、紛争の防止という賃借権の譲渡の許可の制度の目的からすると、裁判所は旧賃借人が交付していた敷金の額、第三者の経済的信用、敷金に関する地域的な相場等の一切の事情を考慮した上で、法２０条１項後段の付随的裁判の一つとして、当該事案に応じた相当な額の敷金を差し入れるべき旨を定め、第三者に対してその交付を命ずることができるものとするのが相当である。」

（弁護士　田中英雄）

　豊島区の池袋駅から徒歩十分位のところに十一階建のマンションがある。ここに住む沼田さんは、隣地の広い駐車場が、買収され都の住宅供給公社になったという話を聞いていた。
　家主から、契約期間満了とともに契約更新をせずに明渡して欲しいという手紙が届いた。近隣の方に事情を聞いたところ、この建物と土地を住宅供給公社に売ったという話だった。
　その後、家主の明渡しの条件が提示され、期間満了までの家賃の免除、即ち六ヶ月分の立退き補償という話だった。沼田さん「このような金額では引越しすることが出来ない」と考え知人の紹介で組合に相談に来た。組合と相談して、家賃の二十ヶ月分を請求することにし、相手方の弁護士に「組合を窓口とし交渉するという」通知を出した。　　相手弁護士はこちらの条件を一発で受け入れ、明渡合意書も組合で作成した「とても一人では出来なかった」と沼田さんの弁。

現家賃の7倍値上げを請求

立川市

　立川市錦町１丁目で立川市役所の近くに住む坂本さんは、親の代の昭和３１年５月から木造平屋建に入居している。家主はこの間３人替わり、平成２年に土地と建物を買い取った不動産業者は五億六千万円の抵当権を設定した。立川市周辺で派手な地上げを行った業者だが、バブル崩壊で会社は倒産、社長も行方不明となった。
　その後、平成１３年に土地と建物が差押となり、東京地方裁判所八王子支部で競売開始決定がされた。今年１月に発表された最低売却価格は２３５６万円とされたが、買主が現れず、再度期間入札の手続きがとられ、結局８月に国立の競売を専門に扱う不動産業者が１７１３万円で落札した。競売の売却価格は通常より３割ほど安く、当物件は占有権限に借家権が認められているため、さらに２５％減価されている。今回新家主が買った４５坪の土地は、坪単価３７万７千円となり、近隣の公示価格が１０９万円と比べても超安い値段だ。新家主は明渡し交渉を地上げ業者に依頼した。
　業者は「坂本さんが移転しなければ家賃が月額２万５千円から１４万円に値上げして貰わないといけない」と脅したりしたが、坂本さんが組合に加入したことを知り、家主直々１０月初めに組合事務所に訪ねてきた。坂本さんと直接面会し、坂本さんはこれまで経緯を説明し、借家権が認められ借家人が住んでいることを承知の上で買ったからといって明渡しには応じられない旨を伝えた。
　家賃を受領する意思があるかどうか聞いたところ、「家賃は受領しないので供託していただいて結構です」との返事が返ってきた。坂本さんは、早速８月分以降の家賃を供託し、今後の家主の出方を見守ることにした。

相続で底地を押売

江東区

　江戸川区松島３丁目で50坪の借地をしている。今年の６月、杉本さんのところに地主の息子たちが訪ねて来た。「親父が亡くなり、相続税を支払わなければならなくなった。安くするから、買ってくれないか。さもなければ、物納する」と言う内容。杉本さんは、ご主人と縫製業を営んできた。1961年に借地をし、1982年には承諾料を支払って新築した。　ところが、ご主人が数年前に事故で亡くなったため、縫製業は廃業して、現在は一人暮らし。　　　　　
　地主の申入にビックリした杉本さんは、組合に相談。物納されても、地主が国になるだけだという事が分ってひと安心していた。
　すると、数日後、地主の相続人たちは不動産業者と再訪。今度は、前回、更新料を支払っていないから支払えと脅してきた。組合に任せてあると言うと、それ以降はぱったりと来なくなった。

ねばり強く交渉し解決

足立区

　足立区千住宮元町に住んでいる佐藤さんは、二軒長屋を弟さんと一戸づつ借り40年住んで来ました。その弟さんも一昨年亡くなり、重宝に使っていた。
　ところが、家主から全部明渡してほしい言われた。
「どうしよう」と組合に相談。
佐藤さんは、かなりの高齢なので裁判や調停はできるだけ避けたかった。
　組合といっしょに家主のところに出向き、3ヶ月で借家の20回もの話合いを行った。
　その結果、家主は<CODE NUM=0171>弟さんが借りていた場所の明渡し<CODE NUM=0172>賃料の少々の値上げ<CODE NUM=0173>契約書の作成を提案して来た。
　今どき、値上げとは思ったが、比隣の賃料よりかなり低かったので了解。契約書は、今までなかったので組合で作成したもので合意した。

営業を続けるために立退断る

品川区

　西大井で建物を借りて文具卸売り店を営業している小野田さんは、家主が経営している工場が倒産してしまった。
　家主から、借りている土地を地主に建物ごと買い取ってもらうから、そのまま営業していけると８月ごろ家主から「安心するように」と説明を受けていた。
家主が抵当権を設定した後に建物を借りた小野田さんは、突然、地主側の弁護士さんから、「借家権は助からないのだから、すぐに建物を明け渡すように」と通告された。
そこで、小野田さんは同業者の紹介で組合に相談に来て組合の法律相談に臨んで、弁護士さんからのアドバイスをもらい、営業を続けるために立ち退けないとしてがんばることとなった。
　小野田さんは、「これで、やっと安心して眠れます。」と帰っていった。

内金として受け取ると言われたが、
賃料を持ち帰って供託してもよいか

（問）賃料の増額を請求され、貸主のところに従来の賃料を持参したが「内金として受け取る」と言われた。賃料を持ち帰って供託してもよいか。（板橋区会社員）
（答）賃料の増額請求をされた場合、借主が相当賃料として従前の額を提供し、貸主がこれを賃料の内金（一部）として受領するという事例は多い。このように貸主が内金として受領する旨を申出たことが民法494条の受領拒否に当るかということで争われた事例では、「賃貸人が賃料を弁済の提供を受けた際内金（賃料の一部）として受領する旨述べることは、特段の事情のない以上、賃料の全額として提供されるのであればその受領を拒絶する趣旨を含むものと解することができる」（東京高判㍼61・１・29同趣旨の判例は名古屋高裁㍼58・９・28及び東京地裁㍻５・４・20がある）として貸主が受領拒絶を認め、借主の弁済供託を有効とした。即ち、貸主が「内金（賃料の一部）として受け取る」という趣旨の申出は、賃料の受領拒絶の意思表示と認定され、借主が賃料を持ち帰って供託したことは適法な供託であるとした。
　７月26日の東借連弁護団会議で、この東京高裁の判例―貸主の内金受領が受領拒絶にあたるかが検討された。弁護団会議の最終結論は、10月８日に発表された。貸主の内金受領が受領拒絶の意思表示であると一般化するのは問題があり、これを実行することには危険が伴うので、従来通りの見解でいくというのが結論であった。
即ち「貸主が、内金であれ、賃料として受け取ると言った場合は、受領を拒否したものではないので支払わなければならない。それを、賃料全額としては受領を拒否したのだからと考えて供託するのは、供託理由がなくて供託することになるので、その供託は無効となり、賃料未払いとして、契約解除の危険がある。したがって、借主としては、従来賃料を支払い、念の為貸主に対して、その賃料額が全額であることを意思表示すればよいのである。（この意思表示は、内容証明郵便で出すのがのぞましい。）なお、受領証に、「内金として」と記載されても、それだけでは、賃料を増額されたことにはならない」

（地代・家賃の供託―東京借地借家人組合連合会パンフレット）

法２０条1項後段の付随的裁判で敷金の交付を命ずることが出来るとした事例

明渡しで頑張る

豊島区池袋の沼田さん

家主が補償請求を即決同意

明渡しを拒否

超安値で競落した新家主は

現家賃の7倍値上げを請求

立川市

相続で底地を押売

江東区

家主の明け渡し要求に

ねばり強く交渉し解決

足立区

家主の倒産で明渡請求

営業を続けるために立退断る

品川区

内金として受け取ると言われたが、
賃料を持ち帰って供託してもよいか

法２０条1項後段の付随的裁判で敷金の交付を命ずることが出来るとした事例

明渡しで頑張る

豊島区池袋の沼田さん

家主が補償請求を即決同意

明渡しを拒否

超安値で競落した新家主は

現家賃の7倍値上げを請求

立川市

相続で底地を押売

江東区

家主の明け渡し要求に

ねばり強く交渉し解決

足立区

家主の倒産で明渡請求

営業を続けるために立退断る

品川区

内金として受け取ると言われたが、 賃料を持ち帰って供託してもよいか

内金として受け取ると言われたが、
賃料を持ち帰って供託してもよいか